Cicada

1.〜introduction for Cicada〜

2.pool
16の頃のガールフレンドを、夏と一緒に思い出している曲。……といっても、未練を歌っているわけではなく、いい思い出としてその頃の風景を懐かしんでいます。
バックトラックは賑やかなんですが、詞のせいか曲全体に微かな寂しさのようなものが含まれている気がします。夏をテーマにして、アップテンポで懐旧を歌うとこの曲になるのかも知れません。

3.Hungry Spider(sin)(r)
許されない恋を、虫に喩えた詞で歌ったシングル曲です。
Sony時代の槇原は、比喩をどう詞の中に取り入れるかにこだわっていた感がありますが、この曲はそれが色濃く表れたものでしょう。リリース当時のインタビュー等でも随分詞にこだわっているように言っていた記憶があります。
この曲の詞は賛否両論あるように思うんですが、私は割合に好きです。……というかこの内容をいつもの「君」「僕」で書いたら、ものすごく辛い詞になると思うんですね。そういう面で、この描き方にしたことは正解だと思うんです……あくまで、私はですが。

4.HAPPY DANCE(sin)(r)
アルバムには別バージョンで収録。
幸せを願って別れることを選んだ二人の別れの場面を描いた、スパニッシュ・アレンジが施された曲です。
たぶんこの歌は、人によって受け取り方が違ってくるんじゃないでしょうか。「幸せになるために別れる」ことをどう考えるかで、全く意味合いが違ってきますから。
で、この曲はスペイン風(というかフラメンコ?)アレンジだから成り立つと思うんですね。アルバムバージョンだと、別曲かと思うほど印象が違います。
寂しくなる曲です。はっきりとではなく、漠然と。

5.Star Ferry
槇原版「月の船」という印象を私は持っています。「月の船」というのは98年にリリースされたカバーアルバム「Listen To The Music」に収録されていた曲で、オリジナルは池田聡さんなんですが、それと雰囲気が似ている気がするんです。
詞は抽象的。何となくですが、宮沢賢治をイメージします。そういう意味では「彗星」と似ていると言える曲です。

6.青春
どうもネガティブな印象を受ける曲です。というのも、「青春」を割と抽象的な詞で思い返しているのですが、その振り返り方というのがどこか後ろ向きなような気がするんです。青臭かった時代を嘲っているというのもありますし、その時代と比べて今の自分が汚れた、みたいなことも言っていますし。
個人的には、どうも違和感みたいなものを拭い切れません。

7.STRIPE!(sin)(r)
ゲレンデで流したら似合う曲です。……というかそのために作られた曲と言って過言ではないでしょう。
ゲレンデの風景の切り取り方が上手いのですが、それ以上にメロディが好きな曲です。

8.この傘をたためば
3rdアルバム「君は僕の宝物」に収録されていた「雷が鳴る前に」の続きとなる曲。
「雷が〜」は結構幸せな曲だったので、その続きとしてこの歌が出てきたとき結構驚いた記憶があります。
痛いところをついてくるんですよね、詞が。恋愛してるときって誰でも多少は迷っていると思うんですが、その迷いや恋をしているときの臆病な姿を正面から描いています。
……泣きたくなります、正直。

9.The Future Attraction
Hungry Spiderのプロトタイプというべき曲です。
このアルバムに収録されているラブソングはほとんどが恋に臆病だったり一人になることを望んでいたりしますが、この曲も臆病でその上強がっています。
今改めて聴くと……というのはある種の結果論ですが、槇原の迷いがラブソングという形を借りて垣間見える気がします。

10.BLIND(c/w)(r)
「HAPPY DANCE」のc/w。
幸せになるために別れを選ぶという意味で、「HAPPY DANCE」とテーマを同じくする曲です。
ラブソングといってもそこで歌われる気持ちの強さは当然様々なわけですが、この曲の主人公は恋人のことを心底好きなんだと思います。だからこそ、別れられる。「長生きしよう」とは全く逆の方向で、究極のラブソングです。

11.Name of Love(r)
いとこ(寺西一雄――世間的にはローリー寺西)に提供した曲のセルフカバーです。
片思いの痛みを軸に、恋心を片隅に抱えたまま生きている主人公を描いています。
この曲の詞が思い当たる人は、意外に多いのではないでしょうか。自分のことだけで精一杯のときに、何故か恋をしてしまった。でも、今は恋よりも優先しなきゃいけないことがある……そんな人に、聴いてみて欲しい曲です。

12.Cicada
「Cicada」とは蝉のことです。この曲は、伝えたいことがある自分を蝉に喩えているんです……が。
これも結果論でしかないのですが、槇原はこのアルバムをリリースした約一ヵ月後に「逮捕」されています。その理由は皆さん御存知だと思いますが、裁判の証言によればこのアルバムは……作品に「影響」が出ている可能性があるんですよね。……もちろん、こういう見方をするのは私自身嫌ですが……。
そして、アルバムタイトルにもなっている「Cicada」なんですが、実は「Cicada」って「不死」と「再生」の象徴らしいんですよね。
詞の内容といい、タイトルの意味といい……単なる偶然に過ぎないのでしょうか……。