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all songs written by Noriyuki Makihara

1.優しい歌が歌えない(sin)
シングル曲。東芝EMIから最初に出した曲でもあります。
割と槇原にしては珍しいタイプの詞のような気がします。「歌」が関係してくる曲ってあまりないんですよ。
テーマ的には「I ask.」あたりに近い、自分の醜さとそれに向き合う姿が描かれています。
シングルの割にこの曲はあまり書くことがないです……。

2.夏は憶えている
夏の風景を、子供を中心に切り取った曲。
この手の曲は槇原の得意分野とも言えます。空も海も出さないで夏を歌える人はそうそういないのでは。……そんなことないか。
で、ちょっと気付いたことがありまして。この曲も含め、槇原の夏の曲は「過去形」が多いんです。
くもりガラスの夏、夏のスピード、pool……。意識的かどうかは分かりませんが、槇原にとって夏は「振り返る季節」になっているようです。

3.Tag Team
Tag Team=家族、ということで、視点が面白い曲です。
アップテンポで楽しげなアレンジではありますが……歌ってる内容は結構身も蓋もないです。自分の悪いところを気付かせてくれるために家族がある=家族は綺麗じゃない、ということでして……。
普通だったら、家族っていうのは辛いとき哀しいときに自分を救ってくれる存在、として描かれるのが多いじゃないですか。
でもこれ、正反対。「家族の悪いところを見て自分を良くしろ」ですから。普通、あまり歌わないかと。

4.武士は食わねど高楊枝
いきなり仕事を首になって妻に出て行かれる曲です。……ってそうではなくて。
子供と二人きりになった男の悪戦苦闘、というところでしょうか。子供も連れてけよ妻、とツッコんだのは私だけではないはず。
槇原、子供はおろか結婚もしてないはずなんですけどね。どうしてこういう曲が書けるんでしょう。
「全ては自分が選んだこと」――「太陽」以来、一貫しているテーマがこの曲でも歌われています。

5.Happy Ending
実体験なんですかね? 割と感想がまとめづらい曲というか……誰にでもありそうな一日の心情を、上手く歌ってます。
人が幸せを求める理由とか、色々考えられる歌ですね……。
色々な意味で、切ない曲です。

6.君の名前を呼んだ後に(sin)(r)
シングル。住友生命「らぶ30」CMソング。
シンプルなバラードです。詞にしても曲にしても、アレンジもそうですね。個人的には、回りくどくない感じが好きです。
聴く人によって少しずつ意味が変わってくるかなあ、という印象です。それは歌っていることが曖昧だからとか ではなく、誰にでも当てはまる曲という気がするんですね。懐の深い歌、というより、誰にでもある気持ちを歌っているからだと思っています。ここ何作か槇原は「特別でないこと」を歌っているように思いますが、この曲もそのひとつです。
こういうストレートなラブソングも最近の槇原には珍しいです。昔はこっち側の曲ばかり歌っていたのですが。

7.とりあえず何か食べよう(c/w)
「優しい歌が歌えない」のc/w。
モータウンサウンド、ですね。音的に色々やっている今作の中にあっても、特に異色の一曲です。
詞はタイトル通りというか……「とりあえず色々あるけど何か食べよう」という内容です。
アルバム「Home Sweet Home」に収録の「ファミレス」とテーマ的には一緒でしょうか。
方向転換してからの槇原はこういう曲、多いですね。抽象的なことじゃなくて、身近で具体的なものを歌う、みたいのが。
以前もそういう曲は多かったですが、最近はより現実的なものが多いです。「24hr Surpermarket」とか。
面白い曲です。

8.ハトマメ〜Say Hello To The World.〜(r)
The Studentに提供した曲のセルフカバー。……というか、「セイン・カミュと愉快な外国人たちfromからくりTV」と表現した方がいいような気が。
一言で言って、愉快な曲。これにつきます。英語を学んで外国人と話そう、というどこぞの英会話教室みたいなテーマの歌です。
個人的にはこれ、「嘘コーラスソング」と認識しているのですが。法隆寺に鹿はいません(槇原もインタビューとかで言ってましたが)
……槇原って胡散臭いコーラス入れるの好きですよね。

9.The Fog(r)
喧嘩をして部屋を飛び出していった同棲中の恋人を、追いかけようと外に出てみたら深い霧がかかっていて…という状況で始まる曲。
この曲、面白いのは「追いかけるのをやめる」んですよ。追いかけないで待ちましょう、という結論にいきつくんですが。
これ、昔の槇原の詞だったら絶対追っかけてました。目覚まし時計抱えた恋人追ったり、彼女の自転車で会いに行ったりしてましたし。
曲自体は切ないです、これ。ギターとウードが上手く「霧の夜」を演出してます。山弦・小倉氏がいなかったら成立しなかった曲です。

10.世界に一つだけの花(r)
SMAPに提供した曲のセルフカバー……説明いるんですかこの曲?
お馴染みのアレです。正確に言うとシングルバージョンのカバーですね。アルバムに収録されてる方はもう少し雰囲気が違ったはず。
「あの件」以来、割と目立たないところで活動していた感のあった槇原を再び表舞台に引っ張り出した曲です。
こうして改めて聴くと、本当にストレートなポップスなんですねこの曲。「どんなときも。」のときもそうでしたが、こういうポップスを作れることこそが槇原の最大の強みではないかと。
詞も当時の歌いたかったこと素直に歌いましたって内容で、区切り、というかベテランと言える活動年数になってきた槇原の新しい名刺としては、これ以上にない曲です。

11.Boy, I'm gonna try so hard(r)
鈴木雅之氏への提供曲のセルフカバー。このアルバム中で一番好きですこの曲。
一言で言えば、大人のラブソング。この曲は埋もれたままにしておくのもったいないです。
素直なバラードなんですけど……なんか、この曲で歌われてるような人は格好いいと思うんですよ。
「自分で働いて得たものだけを君にあげたいから、僕は頑張れる」ですよ? 何て言うか……上手く言えないですけど、そういうのは理想ですよね。
そういう人に、なってみたいものです。

12.僕が一番欲しかったもの(sin)(r)
Blueへの提供曲、「Gift」のセルフカバー。シングル曲。
「人に何かをしてあげたらその分が自分に返ってくる」……これ、槇原の中では確定事項なんじゃないでしょうか。そういう曲です。
曲としては後半になるにつれ盛り上がってくる構成ですね。「太陽」とかと同じタイプです。
「自分が見つけた素敵なものは人にあげたけど、その人が笑ってくれてるからいいや」っていうのは、難しいですよね。譲るよりも先に「渡さない」が来てしまうのが人間だったりするので。
でも、人が笑っていれば自分が笑うっていうのも、また道理だったりするので……個人的にはそういうのが格好いいと思うんですよ、見てくれとかじゃなく。
だから最近の私の中での槇原の位置づけっていうのは、格好いい曲を歌う人、になっています。
この手の曲を説教くさいと嫌う人もいるんでしょうけど、最近はこれが槇原の色だと思うようになってきましたね。
左見ても右見てもラブソングだらけの中で、こういう歌い手が一人くらいいるのも面白いですから。


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