本日ハ晴天ナリ

all songs written by Noriyuki Makihara

1.AMAGING GRACE
AMAGING GRACEです。従って、詞やメロディについてここで言及する必要はないと思います。
特筆すべきはアレンジ。この曲がアルバムに入っていると知った時点で、きっとピアノだけでシンプルに歌っているんじゃないかと想像したんですよ。……素人考えでしたね。
デジタルサウンドでした。もうこれでもかと言うほどに。
頭にこれを持ってきたのは……何て言うか、今の槇原の象徴なんだと思います、AMAZING GRACEが。

2.Wow(r)
「あー、槇原だー」……というわけで、文句のつけようがないポップスです。
「父親」を描いた詞というのは、初めてではないでしょうか。「君が教えてくれるもの」の主人公を、父親に変えたらこうなるのかなという感じです。色んな意味で、今の槇原らしい曲というか……詞にしても音にしても、「今の槇原らしさ」を集めたのがこの曲なのかなという気がします。
「一人で感じられるような幸せは幸せじゃない」というこの曲のテーマは、そのまま今の槇原の基本になっています。 

3.24hr Supermarket(r)
「僕の彼女はウェイトレス」……あの曲が浮かんできたんですよね、最初に聴いたときに。自分でもどうしてか分からないんですけど、この曲で歌われている2人っていうのは「僕の彼女は〜」の2人と同じじゃないかって気がしたんです。
アップテンポのナンバーで、24時間営業のスーパーマーケットを舞台にしています。元々槇原は日常を描くのが上手い人ではあると思うんですけど、最近はさらに上手くなっているというか……以前よりも身近になっている気がするんですよね、描く風景が。この曲も、そんな歌です。

4.縁(c/w)(r)
「雨ニモ負ケズ」のc/w。FONT SIZE+7を使いたいくらいの名曲です。
というか、昔からの槇原ファンには「雨ニモ〜」よりこっちの方が受けがいいのでは。私はそうです。
何か、「うん」のその後って印象なんですがこの曲。他の方はどう思ってるんでしょう。
ウェディング・ソングです。ストレートに「結婚」ってものを感じさせる楽曲はこれと「うん」くらいではないかと思いますが……他にありましたっけ?
「槇原敬之」の王道と言える歌です。
--追記--
アルバムの中の一曲として聴くと、カップリングとして聴いていたときとは少し意味合いが変わってきます。カップリングだったときは前述したようにウェディング・ソングで、アルバムの中で聴いたときもそれは変わらないのですが、「これも人と一緒に生きる形の一つ」という認識ができます。そういう意味で、カップリングとして聴くときとは印象が変わってくる曲です。

5.花火の夜(sin)(r)
シングル。アップテンポですが、「雨ニモ負ケズ」とは違い、ラテン風味の楽曲です。夏の風景をストレートに歌ったシングル曲というのは、槇原にしては珍しいのではないでしょうか。
好きだった人――たぶん片思い――と一緒に花火を見たときの思い出を、今一人で花火を見ながら思い出している……というところでしょうか。
売れ筋の楽曲、というのとは違いますが槇原自身は好きそうな楽曲ですね。自分の歌いたいものを歌っている、という印象を受けます。
個人的には割と好きです、この曲。どこがどう、というのは上手く説明できないんですが、素直に聴ける曲のような気がします。
--追記--
やっぱりこれも、シングルとして聴いているときとは少し印象が違います。楽曲そのものは何も変わってないんですけどね。
この曲の主人公は一人ですけど、それでもやっぱり人のことを考えて生きているということが、このアルバムに収録されることで浮き彫りにされています。

6.君の声を待つ夜(r)
……珠玉。ミドルバラードの、優しい曲です。槇原の声って、必要最低限の音をバックにした曲によく合います。
「人と一緒に生きる」ことをテーマにした今回のアルバムの中でも、特に「距離の近い」曲です。
槇原は、年を重ねるごとに優しい曲を歌うようになっている気がします……個人的な意見に過ぎませんが。

7.これはただの例え話じゃない(sin)
シングル。花火の夜とは対照的に、デジタルな音が前面に押し出された楽曲です。槇原としては珍しいタイプの楽曲で、ミドルタイプのダンスナンバー……でいいんですか?(ダンスナンバーってどういう曲なのか、いまいち掴み切れていないので……)
詞は……事件以後の路線、とでもいうのでしょうか。人間の「生き方」についての詞、というか。
よくよく聴いてみると、結構救いはないです。人間の弱さだけを歌った曲だったりするので。
--追記--
アルバムの中に入ると、これもやはり「人と生きること」を歌った曲なんだな、というのが分かります。ただこの曲は他の曲とは違い、人と生きることを否定してみることでその大切さを描いているので、それに気付かないと辛いだけの曲で終わってしまう可能性がありますが。

8.さよなら小さな街
野宮真貴氏に提供した楽曲。管楽器を多く使った賑やかな編曲で……何て言うんでしたっけこういうの? 古き良き洋楽の世界、という感じです。
街、というのはもちろん比喩で、「小さなところから抜け出してみよう」的な楽曲です。槇原としては珍しいタイプの曲なのは、提供先が提供先だからでしょうか。引き出しの多さを示すというよりは、単純に「遊んだ」曲のような気がします。

9.I got a friend.(r)
このアルバムの中で一番好きな曲です。槇原の「友人」を歌った曲って、押しつけがましくないんですよね。「OCTAVERS」然り、「キミノテノヒラ」然り。これもそんな曲で、何て言うか……友人っていいものだなあと思わせてくれる曲です。
この曲で描かれている主人公と友人の距離って、たぶんそんなに近いわけじゃないと思うんですよ。いつも一緒にいるわけじゃなくて、時々会っては色んな話をする関係……とでも言うのでしょうか。でも、それでも感謝できる、という関係で。そうありたいと、聴くたびに思わされます。……とにかく、いい曲です。

10.雨ニモ負ケズ(Album ver.)(sin)(r)
シングル。タイトルは宮沢賢治からです。
アップテンポ+バンドサウンド(しかも生楽器)という槇原としては珍しい楽曲です。しかもサビに入るまでが長かったりします。
「太陽」以降(というより、「あの事件」以降)に増えた、メッセージソングです。「理想とするような心を持つのは難しい。そのことを知ってからがスタートだ」……というところを歌っています……というのは、あくまで私の解釈。「太陽」以降の自分に向けた、自省の曲ととることもできます。
「Are You OK?」やこの曲がアップテンポなのは、説教くさくしないための一つの手段なのかな、と私は思うんですが……どうなんでしょうその辺り。
「誰もが犯すわけではない、でも誰もが犯す可能性のある罪」を経た後の槇原は、凄く普遍的なところを歌うようになった気がします。この曲も、そんな中の一曲です。
--追記--
アルバムに収録されているバージョンでは、音数が増えている……というかデジタルな音が加えられています。それと、ドラムとパーカッションの音がシングルよりも際立っているように感じるのですが……何しろ素人の耳ですのであてになりません。
アルバムの中に入ってくると、「人と生きるためにまず自分は何をするべきか」を歌った曲のようにも聴くことが出来ます。

11.本日ハ晴天ナリ(r)
タイトルナンバー。「強い」曲ですね。事件以後にリリースされた3枚のアルバムのタイトル曲(「太陽」「Home Sweet Home」「本日ハ晴天ナリ」)は繋がっているようにも思えます。雨に濡れながら太陽を待って、家の中で身体を乾かして、もう一度空を見上げる、という感じでしょうか。
最初に戻る、というのもこの曲のテーマのようです。最後のフレーズが1stアルバムのタイトルだったり(君が笑うとき君の胸が痛まないように)、終わりのメロディが「AMAZING GRACE」だったりするので。
アレンジはシンプル。それだけに、一つ一つの言葉が強く伝わってきます。

12.Turtle Walk(Album ver.)(c/w)(r)
「これはただの例え話じゃない」のc/w。一言で言ってしまえば、ゴダイゴ。イントロなんかもろにそれですね。
詞は「ウサギとカメ」になぞらえた内容です。ソニー移籍以後、槇原の得意パターンとなった感のある比喩を用いた歌詞ですね。音は全体的に軽い感じです。
「世界ウルルン滞在記」エンディングテーマ。
--追記--
アルバムに収録されているバージョンは……何か違いあります? 全体的に音が厚くなった気はしますが……どうなんでしょう。素人耳だから自信はありません。